介護
人を介して利用者さまの尊厳を護る(まもる)
・人を介して行うことを大切にする
・人を介して心を支える
・人を介して介護する
自立支援
利用者さまの自分でできることを増やすことにより選択肢を増やす
・利用者さまの目標を達成するために“自分でできること“を増やす
・できることを奪わない“待つこと“を大切にする
・いなほの基本ケアの徹底
心を支える
人にしかできないケアをする
・利用者さまの寂しさを理解する
・ご家族の心を支える
・ターミナルケアを行い、最後まで寄り添う
いなほの里が考える自立支援とは、“利用者さまの自分でできることを増やすことにより、利用者さまの選択肢を増やすこと”だと考えています。そのため、生理学や生活リハビリを取り入れた介護を実践し、日々、自立支援のための“いなほの基本ケア”の確立・進化に向けた取り組みを行っています。
具体的な取り組みとしては、定期の自立支援ケア研修を行い、毎月1回の地域ケア会議へもローテーションを組み複数名ずつ職員が参加し、自施設でのケア会議・事例検討に反映させています。職員の資格取得や他都道府県で行われる介護・医療に関する研修への参加も支援し、“現在のケアを常により良いものへ進化させていくこと”を職員一同、一丸となり取り組める仕組みができています。
また、いなほの里では、大切なご家族を寝たきりにさせたくない在宅介護中の地域の方、近隣の介護職員の方にも自立支援のための基本ケアを広めていきたいと考えており、介護の基本を教えることが出来るエリート職員の養成にも力を入れています。
① 換気をする
朝・昼・夕、しっかりと外の自然の空気を取り入れて、部屋の空気を清潔に保ちます。生きた空気を吸うことが健康を保つための第一歩です。また、換気をして高い湿度を保つことは、感染症を予防するためにとても大切です。寒い日はみなさんがカゼを引かないよう工夫するのがプロの換気です。
② 水分ケアをする
利用者のみなさまは1日平均1.5リットルの水分を摂取しています。水分が足らないと頭がはっきりしないので、朝起きたらすぐにぐいっと一杯美味しいものを飲みます。水分が多いと便秘も解消され、お腹もスッキリします。十分な水分は、心も体も元気にしてくれます。
③ トイレに座る
水分をしっかりととって、食物繊維をしっかりとって、適度な運動と生活リハビリで身体の調子を整えたら、トイレに行って便器に座ります。このトイレに行って便器に座る習慣が排便を促します。トイレに連れて行くのは介護の最優先の仕事です。時々、失禁することもあるかもしれませんが、おおらかに対応します。
④ あたたかい食事をする
あたたかい食事とは、こころの温まる食事です。みんなで、出来たてのものを食べます。料理は見た目も食べる順番も大切です。できるだけ”普通の食事”を”我が家の食べ方”で食べ続けることができるように、しっかりとお口の健康を保ち、食事しやすい高さの椅子とテーブルを使用します。
⑤ 生活リハビリをする
できることはゆっくりでも自分で行ってもらいます。できることを奪わない“待つこと”を大切にして、安全に生活リハビリができる環境を整えます。食事の席につくのと、トイレに行くだけでも1日20回のスクワットができます。色々な生活動作がリハビリになります。介護士の仕事は、本人のやる気を引き出すことです。
特別養護老人ホームいなほの里
看取り介護に関する指針
1.目的
この指針は、特別養護老人ホームいなほの里(以下「いなほの里」という)の利用者に対する「看取り介護」を実施していくための指針とします。
2.看取り介護とは
いなほの里における「看取り介護」とは、利用者が人生の最終段階を迎えた時に、ご本人及びご家族等の意向を尊重したケアを実施することで、その人らしく安らげる生活の場を提供し、自然な状態のままに残された余命を穏やかに過ごしていただくことをいいます。(必要時には嘱託医の範囲内で身体的苦痛を緩和・軽減する処置も行うことができます。)
3.看取り介護の具体的内容
1)看取りの対象者
疾患あるいは障害、加齢により自然治癒力の低下が著しくなり、治療による改善の可能性が認められないと医師に判断された方。また、ご本人及びご家族等がそれ以上の治療・処置等を望まれず、施設での看取りを依頼され、施設として同意した方。
2)施設における医療体制の理解
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は医療施設ではありません。病院のような病気の治療や回復または療養を目的とした施設ではなく、「高齢者の生活」を支えるための社会福祉施設です。いなほの里の嘱託医や看護師の主たる役割は、利用者の健康管理です。病院のように治療を主とせず、また、常勤の医師や夜勤ができる看護師などの体制は制度的に求められていないため、病院の病棟のように専門的で迅速な対応はできない状況です。ただし、ご本人及びご家族が医療を望まれる場合は、いつでも病院受診ができます。
*嘱託医とは・・・施設の委嘱を受けて診察や治療をする医師。施設の常勤ではなく、診察や治療時のみ来所します。
3)医師・看護体制
①看取り介護実施にあたり、いなほの里は嘱託医との連携及び看護師とは24時間の連絡態勢を確保し、必要に応じた対応をします。
②看護師は医師の指示を受け、利用者の疼痛緩和など安らかな状態を保つように状態把握に努めます。また、日々の状況などについて必要時に家族に対して説明を行い、その不安に対して適宜対応します。
4)本人・家族への説明と意思確認及び同意
医師により看取り時期であると判断された場合、医師及びいなほの里からご本人・ご家族等に対し説明がされた後、十分な話し合いを行い「受診や入院」又は「看取り介護」の意思を確認します。
いなほの里においての看取り介護を選択された場合は、「看取り介護同意書」に署名捺印をしていただき書面にて確認します。
5)看取り時期の判断について
以下のいずれかの状態に当てはまると考えられるとき、看取りの時期と判断します。
①疾患あるいは障害、加齢により自然治癒力の低下が著しくなり、治療による改善の可能性が認められないと医師に判断されたとき
②ご本人及びご家族等がそれ以上の治療・処置等を望まれず、施設での看取りを依頼され、施設として同意したとき
③重度化、弱体化状態にある利用者のバイタルサインに異常が認められたとき
④食事摂取量の著しい低下、バイタルサインの持続的変化等により、全身状態の極端な低下が認められたとき
6)看取り介護の継続が困難だと判断される場合について
上記1)~5)まで、看取り介護の具体的内容についての説明をいたしましたが、以下のような場合には、看取り介護の継続が困難になります。その場合は、看取り介護の途中であっても、ご本人及びご家族に説明をした上で、嘱託医の指示に基づき必要に応じて医療機関へ救急搬送、または、受診を依頼することもあります。その際は、適宜ご対応いただきますのであらかじめご了承ください。なお、必要であれば看取り介護対象者であることを搬送先の医療機関へ知らせた上での対応とします。
①利用者にとって苦痛が続く状況が発生し、嘱託医の範囲ではその身体的苦痛を緩和・軽減できないと判断された場合(例:顕著な呼吸苦、激しい疼痛など)
②老衰による身体機能の低下ではなく、病変に関連する一時的な症状であり、治療によりそれが改善されると医師が判断した場合や、それにより日常生活が介護だけでは対応できなくなった場合(例:便が出なくなる腸閉塞、尿が出なくなる尿閉など)
7)多職種協働による看取り介護に関する計画書作成
看取り介護においては、そのケアに携わる生活相談員、ケアマネジャー、介護職員、看護師、管理栄養士などが協働して看取り介護に関する計画書を作成し、利用者の状態または家族の求めに応じて家族への説明を行い、同意を得て看取り介護を適切に実施します。なお、必要に応じて計画内容を見直し、変更します。
8)看取り介護に関わる書類や記録
看取り介護に関わる書類や記録の整備・保管をします。
9)看取り介護の施設環境整備
看取り介護にあたり、以下のように環境整備をします。
①尊厳ある安らかな最期を迎えるため個室の準備等の環境整備に努め、その人らしい人生を全うするための施設整備の確保を図ります。
②ご家族等の思いを尊重し、面会、付き添い等が円滑にできるよう環境を整備します。
10)看取り介護の援助内容
①栄養と水分
看取り介護にあたっては、多職種間で協力し、利用者の食事・水分摂取量、浮腫、尿量、排便などの確認を行うと共に、利用者の身体状況に応じた食事の提供や好みの食事などの提供に努めます。
②清潔
利用者の身体状況に応じて、可能な限り入浴や清拭を行い、清潔保持と感染症予防に努めます。その他、本人、家族の希望に沿うように努めます。
③苦痛の緩和
〈身体面〉利用者の身体状況に応じた安楽な体位の工夫と援助および疼痛緩和などの配慮を適切に行います。
〈精神面〉身体機能が衰弱し、精神的苦痛を伴う場合、手を握る、体をマッサージする、寄り添うなどのスキンシップ、傾聴し安心できる声かけ等の対応に努めます。
④家族
変化していく身体状況や介護内容については、定期的に医師及びいなほの里からの説明を行い、家族の意向に沿った適切な対応を行います。継続的に家族の精神的援助(現状説明、相談、こまめな連絡など)を行い、家族の意向を確認します。
11)看取り介護実施における職種ごとの役割
〈施設長・副施設長〉看取り介護の総括管理、諸問題の総括責任、スタッフへの「死生観教育」とスタッフからの相談機能
〈ケアマネジャー〉介護サービス計画書の作成、継続的な家族支援、多職種協働のチームケアの強化
〈相談員〉継続的な家族支援、多職種協働のチームケアへの協力
〈介護職員〉きめ細やかな食事・排泄・清潔保持の提供、安楽な体位の工夫、十分なコミュニケーション、状態観察とその記録
〈看護職員〉嘱託医との連携、状態観察・医療処置(疼痛緩和を含む)とその記録、家族への説明と不安への対応、オンコールへの対応、死亡時および緊急時のマニュアルの作成と周知徹底、スタッフへの「死生観教育」とスタッフからの相談機能、福祉用具の選定
〈管理栄養士〉利用者の状態と嗜好に応じた食事の提供、食事・水分摂取量の把握
〈事務職員〉家族との連絡窓口
〈嘱託医〉施設の委嘱を受けての診察・治療、施設職員への医療的な指示、家族への説明
4.看取り介護に関する施設内教育
介護老人福祉施設における看取り介護の目的を明確にし、死生観教育と理解の確立に努めます。
・看取りに関する指針の理解
・看取り介護時にかかわる内容
(看取りの経過や観察ポイント及びアセスメント、記録や書類について、職種間の連携と家族とのかかわりについて等)
・看取り介護終了後の振り返りの重要性
附 則
この指針は平成14年11月 1日から施行する。
本改正に伴う指針は、令和 2年 5月 1日から施行する。